【健脳レシピノート】『まごわやさしい』で始める脳活食生活:記憶力を高めるやさしい食事のヒント
年齢を重ねるにつれ、ふと物忘れが多くなったり、以前よりも集中力が続かなくなったと感じることがあるかもしれません。そのような時、毎日の食事が脳の健康と深く関わっていることをご存じでしょうか。
この「健脳レシピノート」では、脳の健康を保ち、記憶力や集中力の維持に役立つ食事のヒントをご紹介いたします。今回は、日本の伝統的な食生活の知恵が詰まった「まごわやさしい」という合言葉を元に、日々の食卓に取り入れやすい食材とその調理の工夫について考えてまいります。
「まごわやさしい」とは?脳に良い理由を解説
「まごわやさしい」は、健康的な食生活を送るために意識したい7つの食材グループの頭文字を取ったものです。これらをバランス良く取り入れることで、体だけでなく脳にも良い影響をもたらすとされています。
それぞれの食材グループが脳にもたらす働きを、少し詳しく見ていきましょう。
- ま:豆類(大豆、豆腐、納豆、味噌など) 豆類は、私たちの体を作る大切な栄養素である植物性のたんぱく質を豊富に含んでいます。脳の神経細胞や神経伝達物質を作るためにもたんぱく質は不可欠です。また、記憶力に関わるアセチルコリンという物質の材料となるレシチンも含まれています。
- ご:ごま(ナッツ類も含む) ごまやナッツ類には、体のサビつきを防ぐ「抗酸化作用」を持つビタミンEや、良質な脂質が含まれています。脳は酸化ストレスに弱い臓器ですので、抗酸化作用のある食品は脳の健康維持に役立ちます。
- わ:わかめ(海藻類:昆布、のりなど) 海藻類には、脳の神経伝達をスムーズにするミネラル(マグネシウムやカルシウムなど)が豊富です。また、食物繊維も多く含まれており、腸の健康を保つことは「脳腸相関」と呼ばれるように、脳の健康にも良い影響を与えます。
- や:野菜 様々な種類の野菜は、ビタミン、ミネラル、食物繊維、そしてポリフェノールなどの抗酸化物質の宝庫です。特に緑黄色野菜には、脳の機能を守るための多様な栄養素が含まれています。旬の野菜を積極的に取り入れることで、効率よく栄養を摂取できます。
- さ:魚(特に青魚:サバ、イワシ、アジなど) 魚、特に青魚には、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった「n-3系脂肪酸」が豊富に含まれています。これらは、脳の神経細胞の膜を作る重要な成分であり、記憶力や学習能力の向上に役立つと多くの研究で示されています。
- し:しいたけ(きのこ類:えのき、しめじなど) きのこ類は低カロリーでありながら、ビタミンB群や食物繊維が豊富です。ビタミンB群は、脳がエネルギーを作る際に必要な栄養素であり、脳の働きをサポートします。
- い:いも類(じゃがいも、さつまいも、里芋など) いも類には、脳の主要なエネルギー源であるブドウ糖に変換される炭水化物が含まれています。また、ビタミンCや食物繊維も豊富で、ゆっくりと消化されるため、血糖値の急上昇を抑え、安定したエネルギー供給に役立ちます。
日々の食卓で実践する「まごわやさしい」:簡単でやさしい調理のヒント
これらの食材を毎日バランス良く摂ることは、難しく考える必要はありません。いつもの食卓に少し意識して取り入れるだけで十分です。ここでは、高齢の読者の方でも無理なく実践できる、簡単で嚥下しやすい調理のヒントをご紹介します。
ま:豆類を食卓に
- 豆腐は、味噌汁の具材や冷奴として手軽に。やわらかく、嚥下しやすい食材の代表です。
- 納豆はそのまま食べるだけでなく、ひき割り納豆を選んだり、卵や細かく刻んだ野菜と混ぜたりすると、さらに食べやすくなります。
- 煮豆は市販のものを活用したり、圧力鍋を使ったりすると、手軽に柔らかく煮ることができます。
ご:ごまやナッツを手軽に
- すりごまは、和え物やおひたし、味噌汁、ご飯にかけるなど、どんな料理にも合わせやすい万能調味料です。香ばしさも食欲をそそります。
- 細かく砕いたナッツをサラダやヨーグルトに少量加えるのも良いでしょう。
わ:海藻類を意識して
- わかめは乾燥ワカメを使えば、味噌汁やスープにさっと加えるだけで良いので大変便利です。
- もずくやめかぶは、パック入りのものを活用すると手軽にミネラルを補給できます。ポン酢などで味付けを変えて楽しんでみてください。
や:野菜は柔らかく、彩り豊かに
- 旬の野菜を積極的に取り入れましょう。温野菜サラダや具だくさんの味噌汁、スープにすることで、たっぷり野菜を摂取できます。
- 煮物にする際は、野菜を小さめに切ったり、火をじっくり通して柔らかくしたりする工夫が大切です。
さ:魚は手軽に美味しく
- サバ缶やイワシ缶は、DHA・EPAを手軽に摂れる優れものです。骨まで柔らかく煮込んであるため、嚥下の心配も少なく安心です。そのまま食べたり、和え物や煮物、炊き込みご飯の具材にしたりと活用範囲は広いです。
- 白身魚は、蒸し料理や煮付けにすると柔らかく仕上がります。骨が気になる場合は、あらかじめ骨抜きされた切り身を選ぶと良いでしょう。
し:きのこ類はうま味の源
- しいたけ、しめじ、えのきなどは、炒め物、煮物、味噌汁など、様々な料理に活用できます。細かく刻んでハンバーグやオムレツの具に混ぜるのもおすすめです。
- 干ししいたけは、水で戻すことでうま味が凝縮され、料理に深みを与えます。戻し汁も活用しましょう。
い:いも類で満足感を
- じゃがいも、さつまいも、里芋などは、煮物やポテトサラダ、具だくさんの汁物に入れると、満足感がありながらも、ゆっくりとエネルギーを補給できます。
- 柔らかく煮込んだり、マッシュしたりすることで、嚥下しやすい状態にできます。
食事を楽しむための追加ヒント
- バランスの良い食事を心がける: 「まごわやさしい」の食材に加え、ご飯などの主食も適度に摂り、エネルギー源を確保しましょう。
- よく噛んで味わう: よく噛むことは、脳への血流を促し、満腹感を得やすくするだけでなく、消化吸収を助ける大切な行為です。
- 無理なく楽しく続ける: 高価な食材を毎日使う必要はありません。身近な食材で、ご自身のペースで、楽しみながら食生活を豊かにしていくことが何よりも大切です。時には家族と一緒に料理を作る時間も、心と脳を豊かにするでしょう。
- 水分補給も忘れずに: 脳の機能維持には、適切な水分補給も欠かせません。喉が渇く前にこまめに水分を摂るように心がけましょう。
まとめ:小さな一歩が未来の脳へつながる
日々の食事は、私たちの体だけでなく、脳の健康にとってもかけがえのない大切な要素です。物忘れや集中力低下への不安を感じることは自然なことですが、「まごわやさしい」の知恵を取り入れた食生活は、健やかな脳を育むための大きな力となります。
今日から一つでも、ご紹介した食材や調理のヒントを食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか。小さな一歩が、未来の健やかな脳と、充実した毎日へと繋がっていくことでしょう。どうぞご無理のない範囲で、毎日の食事を楽しみながら、脳の健康を育んでいってください。